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                    "当時、大いちょうの南側に居住していた方が所持していたもの。１９４５年７月１２日、警戒警報や空襲警報が発令され、家族で防空壕や父親が２枚の畳を立て掛けて作った三角形の避難所まで移動するも、リュック所持者は焼夷弾の直撃を受けた。戦争の悲惨さや命の尊さを伝える上で貴重な資料となっている。\n\n***\n空襲体験談「お姉さんのリュックサック」\n　当時，私の家は大銀杏の木の南側にあり，私は12歳であった。毎日警戒警報や空襲警報が発令され，不安な日々を送っていた。12日の夜も外へ明かりが漏れないように，電灯を傘ごと黒布でくるみ，薄暗い中で夕食を食べた。親指の太さのふかし芋5本だけの，わびしい食事だった。\n　その夜は，風呂に入ることもなく，家族揃って床に就いた。夜中の11時ごろ，騒々しい音で目を覚まし，明るい方へ目をやると，障子がオレンジ色に光っていた。一瞬きれいだと思った。その瞬間，母の怒鳴り声が聞こえた。「防空頭巾を持って早く防空壕へ！」私は飛び起きた。もたもたしている私を見て，兄もまた「早く逃げろ！」と怒鳴った。見ると父母と3人の兄達は，家財道具を裏の沼地へ投げ入れていたので，私と姉は，二人だけで隣組の防空壕へ避難した。中には，家の近くの人がいるだけだった。不安で胸がドキドキした。ふと隣の姉を見ると，すすり泣いている。私は不意に心細くなった。その時消防団の人の「早く外へ出て逃にげろ！」と怒鳴る声が，突然聞こえてきた。私と姉は，手を取り合って防空壕の外へ逃げ出し，家の裏の崖のようになっているところから，下の沼地に夢中になって飛び降りた。\n　その辺りも四方が火の海で，どちらへ逃げればよいのか迷った。すると，赤々と燃え上がる火の間から，母の姿がぼんやりと見え，「早くこっちへおいで。」という声が聞こえてきた。私は走り寄り，泣きながら母の胸にすがりついた。父もそばに居たのでほっとした。しかし，いつの間にか手を離してしまった姉の姿が，どこにも無い。父が，沼地に投げ込んでおいた2枚の畳を立て掛けて作った，三角形の「避難所」にもぐり込み，姉を待った。だんだん顔も体も熱くなり口もカラカラで，「苦しい，息が詰まりそうだ！」と訴えたが，母は私を胸に抱き，「目を瞑っておいで。今に楽になるよ。」といって，「南無妙法蓮華経」を唱え始めた。なんとも滑らかな節で，少し気分が楽になったような気がした。どのくらいの時間，そうして居たのだろうか。やがて辺りが静かになったので，少しずつ畳の下から顔を出して，恐る恐る周囲を見回すと，姉がすぐ近くで背中のリュックに寄りかかるようにして座っていた。そのリュックの中には，緊急時のために用意した白米１升が入っていた。「周子，何しているの？早くこっちへおいで！」と母が声をかけたが，返事がなかった。父も姉の側に行き，「周子，周子！」と呼んでみた。やはり無言だった。私も近寄って覗き込むと，姉の顔は今にも話し出しそうに見えた。\n　姉の異常に気付き，ショックのあまり腰を抜かしてしまった父に代わり，母が医者を探し回ったが，とうとう見付からず，消防団の人にお願いして姉の様子を見てもらった。するとその人は，「死んでいます。」とすぐに告げた。私達はなかなか信じられなかった。しかし，明りの下で姉をよく見ると，額の端の辺りに指２本ぐらいの窪みがあった。そして，おなかの辺りには血が真っ赤に滲んでいた。また，背負っていたリュックもその中のお米も，血に染まっていた。焼夷弾の直撃を受けて，すでに息絶えていたのだった。\n　次の日，３人の兄たちも，無事に焼け跡に戻ってきた。やっと見付けた荷車に姉の遺体を乗せ，家族揃って火葬場に向かおうとしたとき，突然姉の体から血がポタポタと流れ落ち，下のコンクリートを染めた。それを見て，姉が最期の別れのしるしを私達に残したように思えて，みんなで声を上げて泣いた。\n「うつのみやの空襲」より"
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